❖本調査資料に関するお問い合わせはこちら❖
生体吸収性ポリマーの世界市場規模は2024年に5億米ドル、2029年には8億6,720万米ドルに達し、2024年から2029年にかけて年率11.6%で成長すると予測されています。生体吸収性ポリマーの市場では、整形外科用器具分野が重要な役割を担っており、再手術の必要なく治癒をサポートする材料が常に求められています。PLAやPGAなどの生体吸収性ポリマーは、スクリュー、ピン、プレートなどに利用されており、体内で自然に分解されるため、応力遮蔽や感染などの長期的な合併症が最小限に抑えられるという点が、インプラントの最大のメリットです。ポリマー技術の継続的な開発により、強度、分解率、生体適合性が向上し、より安全で効率的な患者中心のソリューションへの市場のシフトが支持され、整形外科での使用が加速しています。
生体吸収性ポリマー市場における魅力的な機会
アジア太平洋
同地域の医療産業の好調が市場成長の要因。
整形外科機器分野からの需要の増加が、世界の生体吸収性ポリマー市場を牽引しています。
M&Aは今後5年間、市場プレーヤーに有利な機会を提供する見込みです。
アジア太平洋地域は、予測期間中、生体吸収性ポリマーの最も成長率の高い市場になると予想されています。
アジア太平洋地域の市場成長は、高齢者人口の増加と新興国における医療産業への投資に起因しています。
生体吸収性ポリマーの世界市場ダイナミクス
促進要因 外科手術の増加
世界銀行グループの予測によると、2030年には世界の手術件数は年間ベースで人口10万人あたり5,000件に達し、その大半は交通事故によるものです。最近入手したWHOの2023年統計によると、世界中で毎年約120万人が交通事故が原因で死亡していますが、2,000万人から5,000万人が外科的治療を必要とする非致死的な傷害を負っています。65歳以上の成人は慢性疾患の負担が大きく、これも外科手術の件数が増加する要因となっています。新興国でも先進国でも、NCDs（非感染性疾患）は疾病負担の87％以上を占めています。これと並行して、整形手術や歯科手術を希望する人の数も増加しており、生体吸収性医療機器の需要をさらに高めています。
阻害要因 低侵襲手術への嗜好の高まり
低侵襲手術への嗜好は、入院期間の短さ、回復の早さ、出血や痛みの少なさなど、関連する利点のために高まっています。しかし、従来の手術モードとは対照的に、より低侵襲な手術への嗜好のシフトは、さまざまな種類の医療機器に対する需要の減少をもたらし、市場の成長を制限しています。
腹腔鏡手術は、0.5～1.5cmの小さな切開を腹部や骨盤部に数カ所入れる最も一般的な低侵襲手術のひとつと考えられています。このため、多数の縫合糸を使用する必要がなくなり、その結果、手術用縫合糸の需要が減少し、これらの縫合糸に使用される生体吸収性ポリマーの消費量も減少します。
チャンス エレクトロスピニングと3Dプリンティング技術
生体吸収性ポリマーは、特にエレクトロスピニングと3Dプリンティングの組み合わせの場合、足場がより生体適合性が高く、細胞を支持するという点で、組織工学における足場作製を改善しています。エレクトロスピニングでは、天然の細胞外マトリックス（ECM）の構造を模倣した細い繊維状の要素が生成され、目的の組織の形成に必要な細胞の接着と増殖が促進されます。また、3Dプリンティングでは、再生医療に重要な、必要な寸法、構成、生分解速度に応じて最適化された、特定の患者のニーズに応じた足場を製造することも可能です。詳細な足場設計の構造は、骨や軟部組織の修復において、より組織統合能力を高めます。これらのポリマーは体内で分解されるように設計されているため、患者が除去手術を受ける可能性は大幅に減少し、個別化医療や独創的な治療アプローチに新たな息吹を吹き込むことになります。
課題 医療機器の厳しい規制枠組み
生体吸収性医療機器の技術革新には多額の費用がかかり、製品を市場に出すまでには通常7～8年以上を要します。例えば米国では、FDAは生体吸収性医療機器のメーカーに市販前承認（PMA）の取得を義務付けており、これにはいくつかの申請要件があり、臨床試験データも一緒に提出しなければなりません。開発コストと高いリスクにより、製品の3分の2以上が臨床試験段階に進むことができません。臨床的に意味のある試験データを取得する負担も大きい。生体吸収性スマートポリマーはクラスIIデバイスとみなされ、規制上の制約が新しい生体吸収性ポリマーの開発と市場参入の大きなボトルネックとなっています。
世界の生体吸収性ポリマー市場のエコシステム分析
同市場における有力企業には、老舗で財務的に安定した生体吸収性ポリマーメーカーが含まれます。これらの企業は、以前から事業を展開しており、幅広い製品ポートフォリオ、最先端技術、幅広い国際的な販売・マーケティングネットワークを持っています。この市場で著名な企業には、Corbion（オランダ）、Evonik Industries AG（ドイツ）、Foster Corporation（米国）、KLS Martin Group（ドイツ）、DSM Biomedical（米国）、Ashland Global Holdings Inc.（米国）、Zeus Company LLC（米国）、Sequens（フランス）、Reva Medical, LLC（米国）、Poly-Med Incorporated（米国）などがあります。
種類別では、PLGAが予測期間中に生体吸収性ポリマー市場で最も急成長する分野
PLGA（ポリ乳酸-コ-グリコール酸）生体吸収性ポリマーは、主に幅広い用途、生体適合性、分解制御により、市場で最も需要が高い。PLGAの分解期間は、乳酸とグリコール酸の比率を変えることで設計できるため、薬物送達システムから組織工学、手術用縫合糸に至るまで、多くの医療目的に対応することができます。PLGAの手頃な価格は、FDAが承認した様々な用途への使用と相まって、最も厳しい措置の下でも安全性と有効性を保証するため、その多機能利用を後押ししています。再生医療やインプラントにおけるPLGAの広範な使用も、高度な生体吸収性製品に対する需要の高まりにより、ヘルスケア市場におけるPLGAの成長を後押ししています。
最終用途産業別では、薬物送達が予測期間中に生体吸収性ポリマー市場で最も急成長する分野
生体吸収性ポリマーの既存のすべての用途の中で、薬物送達分野が最も高い成長率を示すと予測されています。薬物放出が制御されることで、治療効果や患者のコンプライアンスが向上します。これらのポリマーは、除去の必要がない緩やかなバイオアベイラビリティを有するため、治療後の合併症のリスクを低減します。つまり、薬剤をゆっくりと持続的に送達することで、より良い治療効果を得ることができる、がんなどの生物医学的用途に最適なのです。とりわけ、最近のポリマー技術の向上により、放出および薬剤溶出動態の制御が可能になりました。効率的で正確、かつ侵襲性の低い送達システムに対するニーズは、新たなトレンドのおかげで提供されつつあり、このセグメントの成長に寄与しています。
CAGRでは、アジア太平洋地域が予測期間中に生体吸収性ポリマー市場をリード
収益成長率では、アジア太平洋地域が生体吸収性ポリマー市場をリードする見通しです。急成長の背景には、医療費の増加、慢性疾患の増加、高度な医療技術へのニーズの高まりがあります。しかし、医薬品・医療機器市場の拡大や、中国、インド、東南アジア諸国などの急速な経済発展は極めて重要です。同地域では、低侵襲手術や、手術合併症の軽減、入院期間の短縮といった生体吸収性ポリマーの利点に対する患者の認識も高まっています。また、政策、研究資金、医療システムへの投資といった形での政府の支援も、市場の成長を後押ししています。また、グローバルメーカーや地元メーカーのノウハウやメーカー免除制度も、この地域における革新的な開発や市場拡大に貢献しています。
生体吸収性ポリマー市場の最新動向
2024年8月、アシュランド社がアイルランドで生体吸収性ポリマーの生産施設を拡張し、長時間作用型製剤、生体吸収性デバイス、組織工学ソリューションなどの高度な医薬品用途の需要増に対応する注射剤技術の生産を強化。
2024年4月、エボニックはドイツにあるレゾマー粉末生体材料製造施設を拡張し、無溶媒微粉化技術を追加して、インプラントやエステティック用途向けにカスタマイズされた医療用粉末を提供します。
2021年8月、エボニックはドイツのバイオテクノロジー企業JeNaCellを買収し、創傷治療、皮膚科学、医療技術向けの革新的なセルロース系材料をヘルスケア部門に統合し、バイオマテリアルのポートフォリオを拡大。
2020年9月、コルビオンとトタル社は、トタル・コルビオンPLA合弁事業を通じて、欧州に新しいPLAバイオプラスチック工場を建設することを発表しました。この工場は年産10万トンの生産能力を持つ見込みで、欧州初のグローバル規模のPLA生産施設となります。新工場はフランスに建設され、2024年に稼動する予定です。今回のPLA追加投資により、乳酸生産のさらなる拡大計画が加速される見通し。
主要市場プレーヤー
生体吸収性ポリマー市場の主要プレーヤーは以下の通り
Corbion (Netherlands)
Evonik Industries AG (Germany)
Foster Corporation (US)
KLS Martin Group (Germany)
DSM Biomedical (US)
Ashland Global Holdings Inc. (US)
Zeus Company LLC (US)
Seqens (France)
Reva Medical, LLC (US)
Poly-Med Incorporated (US)
11.1 主要プレーヤー
